知人に送るメッセージを考えてほしくて、AIに「ひとこと考えて」と頼みました。
返ってきたのは、短い一文でした。頼んだとおりです。ただ、こちらとしては物足りませんでした。
「AIに聞いてみたけれど、なんだかピンとこない答えが返ってきて、そのまま閉じた」。そういう覚えがある方は、同じところでつまずいている可能性があります。
あとから考えると、当たり前でした。「ひとこと」としか言っていないのだから、ひとことが返ってくる。
どんな相手なのか、どこに送るのか、どんな感じにしたいのか。何ひとつ伝えていませんでした。
この記事は、そこから頼み方を変えて、返ってくる答えが実際に変わるまでの記録です。難しい話は出てきません。人にものを頼むときには自然に言っていることを、AIにだけ省いていたという、それだけの話です。
例に使うのは短いメッセージですが、仕事のメールでも、案内文でも、直すところは同じです。
結論:返事が短かったのは、こちらが何も決めていなかったからです
AIの性能の話ではありませんでした。頼み方の話でした。
職場で、誰かにこう頼まれたところを想像してみてください。「ちょっと文章お願い」。それだけ。
頼まれたほうは困ります。誰に出すのか、何枚くらいなのか、いつまでなのか。分からないので聞き返します。
聞き返してもらえるから、こちらの説明不足は途中で埋まります。
AIは、たいてい聞き返してきません。困った顔もしません。決まっていないところを、その場で勝手に決めて、答えを返してきます。
だから「ひとこと」と言えば、いちばん短い読み方で返ってきます。長さを決めなかったのはこちらで、AIはその空白を埋めただけです。
あらためて数えてみると、私が決めずに投げたものは、これだけありました。
- 相手との距離感(親しいのか、久しぶりなのか)
- どこに送るのか(メッセージアプリなのか、メールなのか)
- どれくらいの長さがいいのか
- かたい言葉づかいがいいのか、くだけたほうがいいのか
- 案は1つでいいのか、いくつか見比べたいのか
5つ全部を、AIが代わりに決めていました。そのうちのどれか1つでも自分の希望と違えば、返事は「なんだか違う」ものになります。5つとも当ててもらおうというのは、さすがに無理な注文でした。

気が利かないのではなく、気を利かせて勝手に決めてくれていた。そう考えると腑に落ちます。決め方が、こちらの期待と違っただけです。
別のAIに同じことを頼んだら、3案が返ってきました
納得がいかなかったので、別のAIサービスに、同じ「ひとこと考えて」を投げてみました。
今度は、案が3つ返ってきました。長さとトーンが違う3案です。短めのもの、普通のもの、温かい感じのもの。
並べて見比べられる形になっていました。
3つ並んで、ようやく分かったことがあります。最初の一文が物足りなかったのは、比べる相手がいなかったからでもありました。1つだけ出されても、それが良いのか悪いのか、判断のしようがありません。
ただ、ここで「こっちのAIのほうが賢い」と結論を出しかけたのが、私の回り道でした。
まったく同じ言葉で頼んだのに、返ってきたものが「一文」と「3案」に割れています。割れたということは、そこを頼んだ側が決めていなかったということです。
片方は「言われたとおり、ひとつ返そう」と埋めました。もう片方は「選べるように、いくつか出そう」と埋めました。どちらも間違っていません。
指示が無いところを、それぞれのやり方で埋めただけです。
だから、思った答えが返ってこないときは、AIを疑う前に、自分が決めていなかったところを探すほうが早いです。乗り換えても、決めていないことは決まりません。



頼み方を直しておけば、どのAIでも使えます。持ち歩けるのは、そちらのほうです。
AIに「どう頼めばよかったのか」を聞いてみました
差が気になったので、そのままAIに聞きました。「最初からこういう答えを引き出すには、どう頼めばよかったですか」と。
これが、この一件でいちばん役に立ったひと手間でした。うまくいかなかったやり取りの、そのまま続きに打ち込めます。新しく始め直す必要も、別のページを探しに行く必要もありません。
返ってきた答えを、私の言葉でまとめると、こうなります。
状況・媒体・欲しいパターン数・トーンを、最初から入れる。
ふだんの言葉に置き換えると、「どんな状況で」「どこに送るのか」「何案ほしいのか」「どんな感じにしたいのか」の4つです。
読んだときは、拍子抜けしました。特別なコツではありません。人に頼むときには、たいてい言っていることです。
最初に入れる4つ:状況・送り先・案の数・トーン
ここがこの記事の実用部分です。真似していただける形にしておきます。
| 入れるもの | たとえばこう書く |
|---|---|
| 状況 | しばらく会っていない知人に送る |
| 送り先 | メッセージアプリで短く送る |
| 案の数 | 3案ください |
| トーン | かたくなりすぎず、温かい感じで |
状況:誰に、どういう用件で
いちばん効きます。相手との距離感が決まると、言葉づかいが決まるからです。
「知人に」だけでも構いません。細かく書く必要はなく、決めていなかったところを1つ埋めれば、それだけ結果が変わります。
送り先:どこに送るのか
メッセージアプリなのか、メールなのか、手紙なのか。これで長さと形式が決まります。
私が最初にもらった返事が一文だけだったのも、どこに送るのかを伝えていれば防げた可能性があります。「ひとこと」は長さの指定に見えて、実は何も指定していません。1行なのか、3行なのか、どちらにも読めます。
案の数:いくつ欲しいのか
これがいちばん見落としやすく、しかもいちばん簡単です。「3案ください」と足すだけです。
1つしか返ってこないと、良いのか悪いのか判断できません。比べるものが無いからです。3つ並ぶと、そのうちのどれが自分の言いたいことに近いかが見えます。
トーン:どんな感じにしたいのか
「丁寧に」「かたくならないように」「短く事務的に」。ひとことで足ります。
指定しないと、AIはたいてい無難で丁寧な文章を出してきます。無難すぎて自分の言葉に見えない、という不満は、ここを言わなかったときに出ます。
これはAIが悪いのではなく、安全側に寄せているだけだと思います。どんな相手か分からない以上、失礼にならないほうへ倒すのは、人間の代筆でも同じです。
うまい言い方が思いつかないときは、近いものに例えて伝えると通じます。「友達に送るくらいの気軽さで」「案内状に書くくらいきちんと」。この程度で伝わります。
4つをつなげると、こうなります
箇条書きにしなくても、ふつうの一文で構いません。
しばらく会っていない知人に、メッセージアプリで送る短い文章を、かたくなりすぎない温かい感じで、3案考えてください
最初の「ひとこと考えて」と比べてみてください。長くなったように見えますが、増えたのは、自分がすでに知っていたことばかりです。新しく調べたことは1つもありません。
もし「どんな感じにしたいか」が自分でもはっきりしないなら、そこは空けたままで構いません。分かっている3つを書くだけでも、返ってくるものは変わります。
返ってきた案を読んで「もう少しくだけた感じがいい」と思えたら、そのときに足せば済みます。先に全部を決めておく必要はありません。
メッセージ以外に頼むときも、入れるものは同じです
今回はメッセージの話でしたが、4つの中身が入れ替わるだけで、やることは変わりません。
| 頼みたいこと | 足りていない一言 |
|---|---|
| お礼のメールを書いてほしい | 誰に、どんな用件のお礼か |
| 文章を短くしてほしい | 何字くらいまで縮めたいのか |
| 案内文を作ってほしい | 紙で配るのか、画面で読ませるのか |
| 意味を説明してほしい | 誰に分かる言葉で説明してほしいのか |
どれも、人に頼むなら口に出しているはずのことです。相手が画面になったとたんに省いてしまうのは、私だけではないと思います。
気に入った頼み方は、メモ帳などに控えておくと次から早くなります。相手の部分だけ差し替えれば、また使えます。よく使う形を控えておいて、そこだけ差し替える。この考え方は、パソコンの作業を減らすときに広く効きます。次の記事は、同じ考え方をOfficeでやる話です。


条件を足して聞き直したら、返ってくる案が変わりました
教わったとおり、4つを足して聞き直しました。
返ってきたのは、使えそうな案でした。少なくとも、最初の一文を見たときのような物足りなさはありませんでした。
やったことは、条件を足しただけです。特別な言い回しも使っていません。
ネットには「これを唱えると劇的に変わる呪文」のような紹介がありますが、少なくとも今回は、そういうものは要りませんでした。省いていたことを、省かずに言った。それだけで足りました。
もうひとつ、やってみて分かったことがあります。返ってきた答えを読むとき、「これは自分が指定したことか」と見ていくと、決め忘れが見つかります。
自分が言っていないのに、なぜか決まっている部分。そこがAIの埋めたところです。そのままで良ければ放っておけばいいですし、違うなら、そこだけ足して聞き直します。
遠回りだったこと3つ
ここまでの流れで、私が余計に時間をかけたところと、やりがちだと思うところを3つ並べておきます。同じ回り道をしなくて済むように。
1. 「もっといい感じにして」と言い直す
これは効きません。「いい感じ」が何なのかを、まだこちらが決めていないからです。
決めていないことを頼んでも、また相手が決めます。最初と同じところに戻るだけです。
「もっと短く」「もっとくだけた感じで」のように、変えたい方向をひとつだけ言うほうが早く進みます。
2. 先に別のAIを試す
私がやったのはこれでした。たまたま良い形が返ってきたので、そこで満足しかけました。
でも、乗り換えても決めていないことは決まりません。次に別のことを頼んだとき、また同じ場所でつまずきます。頼み方を直しておけば、どのAIでも使えます。
いま使っているものが1つだけなら、無理に増やす必要はありません。この記事でやることは、どれか1つあれば全部できます。
3. 一度で完成させようとする
今回、私も一度では決まりませんでした。頼む、違う、聞き方を教わる、頼み直す。この順番を通っています。
一発で望みどおりのものが出てこないのは、失敗ではありません。やり取りを2回、3回と重ねてよいものだと思っておくと、気が楽です。
ただし、渡していい情報には線があります
この記事はここまで「状況を伝えるほど答えは良くなる」という話をしてきました。ただし、渡す情報には一度、線を引いておいてください。
状況を伝えるほど答えが良くなるのは、そのとおりです。だからこそ、つい書きすぎてしまいます。
とはいえ、渡すのは「しばらく会っていない知人に送る」くらいで足ります。相手の名前も、勤め先も、細かい事情も要りません。
言葉づかいを決めているのは、相手が誰かではなく、相手とどれくらいの距離かだからです。距離さえ伝われば、名前は要りません。
目安はこう考えると分かりやすいです。その文章を、知らない人に見せられるかどうか。見せられないものが混ざっているなら、そこは書かずに、ぼかした言い方に置き換えます。
置き換え方は、そう難しくありません。
| そのまま書きたくなること | こう置き換える |
|---|---|
| 相手の名前 | 知人/同僚/取引先の方 |
| 会社名や部署名 | 取引先/別の部署 |
| 具体的な日付や場所 | 先日/ある場所で |



会社の仕事で使う場合は、話がもう一段変わります。勤め先に決まりがあるか確認してください。分からないうちは、仕事の中身をAIに書かないでおけば安全です。
無料で使えるAIサービスに何を入れてよいか、入れたものがどう扱われるかは、別の記事にまとめてあります。気になったときに読んでいただければ十分です。


まとめ:思った答えが返ってこないときに見直すこと
- AIを疑う前に、自分が決めていなかったところを探す。決めていないところは、AIが勝手に決める
- 最初に入れるのは状況・送り先・案の数・トーンの4つ。人に頼むときには言っていること
- 「3案ください」は、いちばん簡単で効く一言。比べるものがあると判断できる
- うまくいかなかったら、そのAIに「どう頼めばよかったか」を聞く
- 渡す情報は、知らない人に見せられる範囲までにとどめる
結局、送ったのは自分で書いた一文でした
聞き直して返ってきた案を、しばらく眺めていました。
そして、どれも違うと思いました。
最後に送ったのは、そのどれでもありません。自分で書いた、短い一文です。




