家族の写真とスマホの動画がたまってきて、そろそろどこかに残さないと、と思い始めたところだと思います。外付けハードディスクを見に行ったら「NAS」という言葉が出てきて、値段がずいぶん高い。それで止まっているのではないでしょうか。
結論から書きます。NASが必要かどうかは、「守りたいか」ではなく「家の中で共有したいか」で決まります。見るのが自分だけなら、外付けハードディスクで足ります。
この記事は、買うかどうかを決めるところまでです。機種の選び方には入りません。私は10年ほどNASを使っていて、その間に一度は中身が壊れかけ、一度はウイルスに写真を暗号化されました。それでもまだ使っています。その立場から、買う前に知っておいてほしいことを書きます。
結論:NASは「高いバックアップ装置」ではなく、家じゅうから見える置き場です
NASを日本語にすると「ネットワークにつながる置き場」です。ここが外付けハードディスクとの分かれ目で、NASはパソコンにつなぐのではなく、家のルーターにLANケーブルでつなぎます。
つながる先が家のネットワークなので、同じ家の中の機械から見えます。デスクトップからもノートパソコンからも見えますし、スマホからも見えます。対応しているテレビなら、テレビからも見えます。置いてあるパソコンの電源が入っているかどうかは関係ありません。
もうひとつ、先に知っておいてほしいことがあります。NASは、電源を入れっぱなしにして使う小さなパソコンです。置き場所が要りますし、動いている間は電気を使います。ディスクが回る音もします。寝室に置くと音が気になる方もいると思います。
家じゅうから見えるという便利さは、つまり「いつでも起きている」ことと引き換えです。外付けハードディスクなら、使うときだけつなげば済みます。
買ったほうがいい人・いまは要らない人
先に振り分けます。ここがこの記事の中心です。当てはまる行を探してください。
| あなたの家の状態 | 向いているもの |
|---|---|
| 見るのは自分だけ。使うのもパソコンのそば | 外付けハードディスク |
| 見るのは自分だけ。ただし家ごと失うのが怖い | 外付けハードディスクとクラウド |
| パソコンは1台。でも家族のスマホやテレビからも見たい | NAS |
| パソコンが2台以上あって、同じデータを両方で使う | NAS |
| パソコンを起こさずに、置いたデータを見たい | NAS |
大事なのは3行目です。パソコンが1台しかない方でも、家族の側から見たいならNASの出番になります。台数の話ではなく、見る人と見る機械が何種類あるかの話だからです。
1行目と2行目の違いは、置き場所です。家の中に1つあれば足りるなら外付けハードディスクで、火事や盗難のように家ごと失う心配まで見るなら、家の外にもコピーが要ります。そこがクラウドの役目です。
NASを入れると、置く手間はいつもと同じで、見る側の入口が増えます。変わるのは置き方ではなく見え方です。
反対に「見るのは自分だけ」「置いておきたいだけ」の2つに当てはまる方は、ここで引き返してもらって大丈夫です。NASが高いのは、そのままネットワークの機能の値段です。使わない機能にお金を出すことになります。
「クラウドではだめなのか」と思われたかもしれません。預けるだけならクラウドで足ります。この記事がNASの話をしているのは、あくまで家の中で共有する道具として見たときです。
家族の写真を全部クラウドに置くと、容量に応じた月額がずっと続きます。テレビから見るのも、家族それぞれのアカウントで見せるのも、ひと手間かかります。そこが面倒でNASにした、という順番でした。
ただし、どちらか一方に決める話ではありません。置き場と、そのコピーの置き場は別に考えてください。NASを買っても、切り離されたコピーは別に必要です。理由は後の見出しで書きます。
写真の守り方そのものを知りたい場合は、外付けハードディスクとクラウドの使い分けを別の記事に書いています。買わないと決めた方は、こちらへ進んでください。

私がNASを買った理由は6つあって、バックアップは1つだけでした
ここは私の話なので、上の表で自分の行が決まった方は読み飛ばしてかまいません。「NASは何のために買われているのか」を知りたい方に向けて、自分が何のために買ったのかを順番に書き出してみました。
- 複数のパソコンで同じデータを扱いたかった(写真を編集するソフトを、デスクトップとノートの両方で)
- リビングのテレビで、子どもの部活動の動画を見たかった
- 外付けハードディスクだと、パソコンがないと共有の設定をしても見られなくて不便だった
- スマホの写真をバックアップしたかった
- NASの中の写真を、Amazon Photosと同じ内容にしておきたかった
- ディスクが1台壊れても大丈夫なようにしたかった
並べてから自分でも驚いたのですが、バックアップは4番の1つだけです。あとの5つは、1台のパソコンの中だけでは足りない、という話でした(6番は故障への備えで、これは後で書き直します)。
正直に書いておくと、1番は結局あきらめました。写真を編集するソフトの作業データをNASに置いて2台で共有しようとしたのですが、速度が足りませんでした。買った理由のうち、いちばん最初に挙げたものができなかったわけです。
それでも2番と3番があるので、買ったこと自体は後悔していません。ただ、「これがやりたい」が1つだけの人は、それができなくなったときに何も残りません。ここは買う前に考えておく値打ちがあります。
外付けハードディスクとの違いは、速さでも容量でもありません
3番に書いた一文が、いちばん実感に近い言い方です。外付けハードディスクは、それをつないだパソコンが動いていないと中が見られません。
共有の設定をしても同じです。共有しているのは外付けハードディスクではなく、それがつながっているパソコンのほうだからです。だから家族が見たいときには、まずそのパソコンを起こしに行くことになります。私はこれが面倒でした。
机の引き出しと、家の廊下に置いた棚の違いだと思ってください。引き出しは持ち主が開けてくれないと中身が取れません。棚なら、家族が通りがかりに自分で取れます。
では実際にどう見えるのか、というところも書いておきます。ここが分からないまま値段を見ていると、判断ができません。
パソコンからは、エクスプローラーの「ネットワーク」のところにNASが出てきます。特別なソフトを開くわけではありません。あとはいつものフォルダと同じで、写真をドラッグして入れれば終わりです。
スマホやタブレットからは、NASのメーカーが出しているアプリで見ます。テレビの場合は、対応しているテレビなら、テレビ側の一覧に家の中の機械として出てきます。呼び出し方はテレビによって違うので、そこはお使いのテレビの説明書に譲ります。
買う前に知っておいてほしいこと(1)ディスクを2台にしても、バックアップにはなりません
NASの説明でよく出てくるのが「RAID」です。いくつか種類があるのですが、家庭でよく使われるのはディスクを2台入れて、同じ内容を両方に書いておく設定です。片方が壊れても、もう片方が残ります。
これは便利です。ただこれはディスクの故障に備えるものであって、バックアップではありません。ここを取り違えると、いちばん困ります。さきほどの6番を書き直すのはここです。
理由は単純です。両方のディスクに同じことを書く設定なので、間違えて消したときは両方から消えます。ウイルスに暗号化されたときは、両方が暗号化されます。壊れたのはディスクではないので、ディスクを2台にしても何も残りません。
これは知識として書いているのではありません。私はこの設定にしたNASを、身代金を要求するウイルス(ランサムウェアと呼ばれます)にやられています。写真の大半が暗号化されて、ファイル名も失いました。
ですからNASを買うなら、そのNASとは別に、切り離されたコピーを1つ持ってください。同じ箱の中でディスクを2台にすることは、その代わりになりません。持ち帰ってほしいのはこの一点だけです。
では何にコピーするのか。私の場合は、NASに外付けハードディスクを1台つないで、そこへ毎日自動でコピーしています。NASを買うときに一緒に買うもの、と考えておいてください。クラウドに置く形でもかまいません。使い分けは別の記事に書いています。
そのときの記録も残してあります。いま読む必要はありません。買ったあとで気になったときに開いてください。


買う前に知っておいてほしいこと(2)機能は、メーカー以外の都合で消えます
さきほどの6つのうち、5番の「Amazon Photosと同じ内容にしておきたかった」は、いまはできません。
NASからAmazon Photosへ写真を送る連携は、Synologyが2020年11月1日、QNAPが2021年4月30日で終わっています(どちらもNASのメーカー名です)。理由はNASの不具合ではなく、Amazon側が外部のサービス向けに用意していた受け口をやめたことでした。
Amazon Photos自体は今もプライム会員向けに続いています。塞がれたのは、NASから自動で送る部分だけです。終了の経緯はAFTVnewsの記事とこちらのブログにまとまっています。
NASの中でLinuxを動かして送る方法を作った人もいるようですが、私は試していません。できると書けるのは、自分でやってみたことだけです。
ここで持ち帰ってほしいのは、Amazonの話そのものではありません。買う理由がクラウドとの連携ひとつだけなら、その理由は相手の都合で消えることがあるということです。カタログに並んでいる連携機能は、そのメーカーだけで決められるものではありません。
買う前に知っておいてほしいこと(3)買った人が、管理する人になります
これがいちばん見落とされるところだと思います。外付けハードディスクは、つないで使うだけです。NASはネットワークにつながる機械なので、持ち主が面倒を見ないと、だんだん危なくなります。
ただ、やることは3つだけです。私が自分の被害のあとに書き残したのは、この3つでした。
- 家の外から直接つながるようにしない。これは自分でオンにする設定なので、家の中だけで使うなら触らないでください
- NASの中に入れたアプリを、新しい版が出たら入れ替える
- 本体そのものの更新(ファームウェアと呼ばれます)が来たら当てる
1番目がとくに大事です。外出先からスマホで家の写真を見られる、というのはNASの売りのひとつなのですが、その入口を開けておくと、インターネットの側から探して回っている相手にも見つかります。私がやられたときに広まっていたのも、外から見つけられるNASを狙うものでした。
2番目と3番目は、パソコンの更新と同じで、画面に知らせが出たら押すだけです。難しい作業ではありませんが、誰も代わりにやってくれません。この3つを自分でやる前提で決めてください。そこまで見て「面倒だ」と思うなら、外付けハードディスクのほうが向いています。それは負けでも手抜きでもありません。
買うと決めたら、先に決めるのは機種名ではありません
ここまで読んで買う側に決まった方へ。買うものは3つあります。NASの箱、その中に入れるディスク、そしてコピー用の外付けハードディスクです。
店頭やネットに並んでいる金額は、たいてい箱だけの値段です。そこにディスクの代金が足されます。ここを見落とすと、予算が最初から合いません。まず「3つ買う」と思っておいてください。
そのうえで、機種名より先に決めることがあります。ディスクが何台入る箱にするかです。
私は2台入る箱から始めて、写真が増えたところで足りなくなりました。困ったのは容量ではなく、増やす方法です。2台の箱は空きがないので、容量の大きいディスクに入れ替えるしかありません。使えるディスクが余ったまま、買い直しになりました。
ですから選ぶ基準は、いま足りる台数ではなく、空きが残る台数です。いま2台ぶんで足りるなら、4台入る箱にディスクを2台だけ入れて始める、という買い方ができます。増えたら足せばいいので、入れ替えになりません。
容量のほうは、数字を挙げても外れます。先に、いま写真と動画が入っている場所の大きさを見てください。スマホなら設定の画面に、パソコンなら写真のフォルダを右クリックすると出てきます。それを知らないまま容量を選ぶと、必ず足りないか、使いきれないかのどちらかになります。私は増える速さを見誤ったほうでした。
機種ごとの比較は別の記事にします。この記事は、買うかどうかを決めるところまでです。
まとめ
- NASは「家のネットワークにつながる置き場」。必要かどうかは共有したい相手や機械があるかで決まります
- 見るのが自分だけなら、外付けハードディスクで足ります。パソコンが1台でも、家族の側から見たいならNASの出番です
- 外付けハードディスクとの違いは速さや容量ではなく、パソコンを起こさないと見られない点です
- ディスクを2台にしてもバックアップにはなりません。消したときも暗号化されたときも、両方から消えます
- 買う理由がクラウドとの連携ひとつだけなら、その理由は相手の都合で消えることがあります
- 買った人が管理する人になります。外から直接つながるようにしない、アプリを入れ替える、本体の更新を当てる、この3つは自分でやることになります
- 買うものは3つです。箱、ディスク、コピー用の外付けハードディスク
- 機種名より先に「ディスクが何台入る箱にするか」を決めてください。基準は空きが残る台数です
