2階だと動画が止まる、と家族に言われる。1階では何ともないので、こちらは困っていません。それでも何とかしてほしいと言われます。
言われ方はだいたい漠然としています。子ども部屋でつながらない、階段のところで切れる、夜だけ重い。本人も、どこからどこまでが同じ症状なのか分かっていません。
Amazonで探すと、数千円の中継機と、けた違いに高いメッシュWi-Fiが並んでいます。どちらも電波を広げるものなのに、値段が大きく違う。
この差は、電波の強さでも速さでもありません。移動したときに、つなぎ先が自動で切り替わるかどうかです。だから、選ぶときに見るのは家の広さではありません。その部屋で使うものを、持ち歩くかどうかです。
分かれ目は、持って歩くかどうか
| 2階で使うもの | 買うもの |
|---|---|
| 置いたまま動かさない(テレビ、ゲーム機、デスクトップのパソコン) | 中継機で足ります |
| 持って歩く(スマホ、ノートパソコン、タブレット) | メッシュWi-Fi |
2階のテレビで動画を見るだけなら、数千円の中継機で終わる話です。テレビは動きません。いちど良い方につないでしまえば、そのままです。
困るのはスマホのほうです。1階から2階へ、階段を通って持って上がります。このとき、中継機だと1階のルーターをつかんだまま2階へ行きます。電波は遠ざかっていくのに、つなぎ先は変わりません。
「アンテナは立っているのに遅い」という状態は、たいていこれです。
両方ある家のほうが多いと思います。2階にテレビもあるし、スマホも持って上がる。その場合はメッシュのほうへ寄せてください。置いたまま動かさないものは、どちらを買っても困りません。困るのは持ち歩くほうだけなので、そちらに合わせて決めると外しません。
なぜ2階だと弱くなるのか
Wi-Fiの電波は、離れるほど弱くなります。ここまでは想像どおりだと思います。やっかいなのは、距離よりあいだに何があるかのほうです。
1階と2階のあいだには床があります。木の床なら通りますが、鉄筋コンクリートの建物や、床暖房が入っている家では、そこで大きく弱くなります。バッファローの解説ページも、電波をさえぎるものとして鉄筋コンクリートと金属や温水を使う床暖房を挙げています。
同じ家の同じ距離でも、真上か、階段を回った先かで変わります。「2階が全部だめ」ではなく「この部屋だけだめ」になるのはそのためです。
もうひとつ、電波には2種類あります。この記事の後半、買わずに試せることのところで使います。
中継機とメッシュは、やっていることが同じ
どちらも、ルーターの電波をいったん受け取って、その場からもういちど出し直します。ルーターが1台では届かない場所に、電波を出す場所をもう1つ作る。そこは変わりません。
そこまでが同じなので、商品ページに書いてある「広がる」「届く」という言葉では、どちらを買えばいいのか決まりません。
違うのは、移動したときに切り替わるかどうか
中継機は、ルーターとのつながり方が決まったままです。バッファローの説明ページには、中継機について「この接続は固定であり自動で変更されることはありません」と書かれています。スマホから見える接続先が、中継機のぶん別に並ぶこともあります。

メッシュWi-Fiのほうは、親機と子機が互いに連絡を取り合っています。同じページのメッシュの説明は「自動で接続先を変更しなおします」です。スマホが2階へ上がれば、近いほうへ勝手に移ります。
この乗り換えをローミングと呼びます。書いてあるのはバッファローの解説ページとAtermStationのメッシュ中継のページです。後者には、対応していない機器では自動の切り替えが働かないことがあるという注意も書かれています。いま売られているスマホなら心配はいりませんが、ずっと前のものを2階で使っているなら、そこは期待しすぎないでください。

いま使っているスマホなら、近いほうへ自動で移ります。
値段の差は、ここに付いています。速さを買っているのではありません。
ややこしいのは、中継機でも接続先の名前は増えないことがある点です。バッファローの中継機は、ボタンひとつでルーターの名前とパスワードをそのまま引き継ぎます。一覧の見た目は1つでも、つかんでいる相手は固定されたまま、ということが起きます。
2階へ上がってスマホが遅いとき、画面を見ても原因が分からないのはこのためです。名前は同じなので、遠いほうをつかんだままでも、見た目には現れません。
買う前に、お金をかけずに試せることが2つあります
2階が弱い原因が置き場所だったという場合があります。先にこちらを見てください。
1つめ:ルーターの置き場所を変える
電波は、金属と水に弱いです。冷蔵庫の裏、テレビの裏、水槽のそば、金属製のラックの中。このあたりに置いてあると、そこで弱くなります。床に直接置いてあるのもよくありません。
家の隅ではなく、なるべく中央の、少し高い場所へ動かしてみてください。それだけで2階の様子が変わることがあります。
2つめ:2.4GHzのほうにつないでみる
Wi-Fiの接続先を選ぶ画面に、似た名前が2つ並んでいることがあります。途中の1文字か、末尾だけが違う、という形です。これは2.4GHzと5GHzという2種類の電波で、性格が違います。
| 2.4GHz | 5GHz |
|---|---|
| 遠くに強い。混み合いやすい | 速い。壁と距離に弱い |
2階まで上がってくるのは2.4GHzのほうです。5GHzにつないだまま弱いと言っているなら、2.4GHzに変えるだけで止まらなくなることがあります。
どちらがどちらかは、名前の中の1文字で見分けられることが多いです。バッファローのルーターなら、「A」が入っているほうが5GHz、「G」が入っているほうが2.4GHzです。同社のサポートページに「初期設定SSIDは、5GHz用の『A』と2.4GHz用の『G』の両方が発信されます」と書かれています。
ほかのメーカーで見分けがつかないときは、2つとも順番につなぎ替えて、2階で見てもらってください。当たりのほうは、その場で分かります。2つしかないので、調べるより早いです。
それでも届かないときの決め方
置き場所を変えても駄目なら、1台足す番です。上から順に見てください。
- 2階で使うのが置いたまま動かさないものだけなら、中継機を1台。数千円で済みます
- スマホやノートパソコンを持って歩くなら、メッシュWi-Fi。親機ごと入れ替えになります
- いまのルーターが古くて、そろそろ替えどきなら、迷わずメッシュのほうへ。どうせ替えるなら、足す前に替えたほうが安く済みます
3番目が分かりにくいところです。中継機を買ったあとでルーターを買い替えると、中継機の側が古い規格のままで、新しいルーターの速さを活かせません。順番を逆にすると無駄が出ます。
親機を買い替えずにメッシュにできることがあります
メッシュは親機ごと入れ替え、と話しましたが、例外があります。いまのルーターが「Wi-Fi EasyMesh」に対応していれば、子機を足すだけで済むことがあります。
これはWi-Fi Allianceという団体が決めた共通の規格です。以前はメーカーごとに別々の仕組みで、同じメーカーで揃えないとつながりませんでした。共通の規格ができたので、メーカーをまたいで組める道ができています。ただし、メーカーごとの独自のメッシュとは別物です。両方が「Wi-Fi EasyMesh」と書かれているかを見てください。
確かめ方は、検索の窓に「型番 EasyMesh」と入れるだけです。たとえば型番が WSR-1800AX4 なら「WSR-1800AX4 EasyMesh」。メーカーの対応の一覧が出てくるので、そこに型番があるかを見ます。
箱に書かれていなくても、あとからの更新で対応した機種があります。箱や買った時期で決めないでください。その場合は、ルーターの設定画面を開いて、更新をしてから使います。更新の項目がどこにあるかはメーカーによって違うので、これも「型番 ファームウェア 更新」で調べるのが早いです。
対応していれば、出費は子機1台分で済みます。親機ごと買い替えるのとは差が大きいので、買い物に行く前に見ておく値打ちがあります。



型番は、ルーターの底面か側面のラベルに書いてあります。
中継機を選ぶときに、ひとつだけ見ておくこと
中継機は、いまのルーターと組み合わせて使うものです。ルーターの側が対応している規格を確かめてから買ってください。
見るのは「Wi-Fi 5」「Wi-Fi 6」といった表示です。ルーターがWi-Fi 5までのものなら、Wi-Fi 6の中継機を買っても、その速さでは動きません。
自分のルーターがどちらかは、さきほどと同じで型番で調べられます。底面のラベルの型番を、そのまま検索の窓に入れてください。箱を捨てていても分かります。
同じメーカーで揃えると、設定が楽なことが多いです。ボタンを押すだけでつながる仕組みが、メーカーごとに用意されているためです。
置く場所は、届かない部屋ではありません
ここを間違えると、買っても変わりません。中継機は、ルーターと、電波を届けたい場所の中間に置きます。バッファローの中継機のページにも、中間地点に設置して、弱くなる前に電波を受け取って出し直す、と書かれています。
2階の奥の部屋が弱いからといって、その部屋のコンセントに挿しても、そこはもう電波が弱い場所です。弱い電波を受け取って、弱いまま出し直すことになります。
階段の途中や、2階の上がってすぐのあたり。ルーターの電波がまだ元気な場所を選んでください。
中継機はコンセントに直接挿す形のものが多いので、置ける場所はコンセントの位置で決まってしまいます。買う前に、そのあたりに空いているコンセントがあるかを見ておいてください。延長コードで引っぱると、結局は床の近くに転がることになります。
私は以前、床の造りのせいで電波が通りにくい家で、電波を出すものを足し続けたことがあります。気づいたら4か所。しかも1台から2種類の電波が出るので、接続先の一覧には自分の家のものだけで8つ並んでいました。どれにつなげばいいのか、家族には分かりません。8年ほど前の話です。
足せば届く、という考え方の行き着く先がこれでした。その後、電波を出す場所は1つにまとめました。
買ったのに変わらない、というとき
1台足したのに2階が前と同じ、という場合、たいてい次のどれかです。
まず、スマホが前のつなぎ先をつかんだままのことがあります。中継機を置いた直後は、2階でいちどWi-Fiを切って、入れ直してください。つなぎ先を選び直すので、これで変わるなら原因はそれです。
次に、中継機の置き場所です。ひとつ前で話したとおり、届かない部屋に置いても中継できません。ルーター寄りへ動かしてみてください。
速くなったかどうかは、感覚ではなく数字で見たほうが早いです。ブラウザで「スピードテスト」と検索すると、その場の速さを測れるページが出てきます。1階と2階で1回ずつ測って、数字を比べてください。2階だけが極端に低ければ、届いていないということです。
どちらも変わらないなら、足す場所ではなく、回線のほうを疑う番です。1階でも数字が出ていないなら、家のなかの電波の話ではありません。
「夜だけ重い」は、別の話です
家族の言い分に「夜だけ重い」が混ざっていたら、そこは切り離してください。朝や昼は2階でも普通に使えているなら、電波が届いていないわけではありません。
夜は、同じ回線を使う人がいっせいに増える時間帯です。家のなかで中継機を足しても、そこは変わりません。1階でも同じように重いかどうかを、いちど確かめてみてください。
1階でも重いなら、買うべきものは中継機でもメッシュでもありません。
やらないほうがいいこと
- 中継機を2台3台と足していくこと。つなぎ先が増えるほど、家族がどれを選べばいいのか分からなくなります
- 2階の真上ではなく、家の端に中継機を置くこと。中継機はルーターの電波が届く範囲に置くものです。届かない場所に置いても中継できません
- 速くなることを期待してメッシュを買うこと。変わるのは届く範囲と切り替わり方で、契約している回線より速くはなりません
「ルーターが古いからでは?」と思った方へ
その線もあります。ただ、年数で決めるものではありません。見るのはメーカーのサポートが続いているかどうかで、その調べ方は別の記事で話しています。


弱いのではなく、そもそもつながらない、インターネットなしと出ている、という状態なら、別の話になります。そちらはこちらです。


まとめ
- 中継機とメッシュの違いは、速さでも値段でもなく移動したときに切り替わるかどうか
- 2階で使うのが置いたまま動かさないものだけなら中継機。持って歩くならメッシュ
- 買う前に、ルーターの置き場所と、2.4GHzへの切り替えを試す。どちらもお金がかかりません
- ルーターがそろそろ替えどきなら、中継機を足さずに親機ごとメッシュへ
- いまのルーターが「Wi-Fi EasyMesh」に対応していれば、子機を足すだけでメッシュになります
家族に「2階だと止まる」と言われたら、まず何を使っているのかを聞いてみてください。テレビなのか、スマホなのか。それで買うものが決まります。
そのうえで、ルーターを動かして1回試す。ここまでお金はかかりません。







